弓削田醤油は、大正12年(1923)に埼玉県坂戸市にて創業しました。

創業当時の弓削田醤油(株)
醤油醸造業を創業するきっかけとなったのは、初代当主・弓削田 佐重氏が農業を営むなかで “醸造学” に興味を持ち、醤油・味噌蔵を立ち上げようとしたことにあります。ちょうどその頃、現在の入間市にあった醤油蔵との縁があり、蔵の設備や杜氏さんを丸ごと迎え入れることになり、弓削田醤油が誕生しました。
前身も含まれると、200年以上にわたる醤油蔵の伝統があります。
現在、4代目を務める弓削田 洋一 氏は、初代から伝わる家訓 「商売に羽織りを着せろ」との教えを守りながら、
「醤油は安心して口にいれられるものでなくてはいけない」
「醤油は調味料なので、美味くなければ意味がない」という信念を貫いています。
この信念のもと、原材料や木桶仕込みという醸造工程に徹底してこだわり、日本の味である醤油を作り続けています。
創業100周年を迎えた2023年、これから先も100年以上、美味しい醤油を作り続けるための願いを込めて、百年蔵が建築されました。蔵には現在14本の木桶が稼働中、あと3年ほどかけて2桶増設する予定です。

弓削田醤油|百年蔵

百年蔵|梁や柱にも地元の杉が使用される
創業100周年を飾るイベントの一環として、新たな木桶が特別に製作されました。この木桶には、地元から近い西川材や飯能杉を使用しております。
埼玉県の蔵であり、埼玉県産の小麦・大豆などを使用して仕込むため、地元の杉の木を使って作ることで、同じ気候風土で育ったもの同士、美味しい醤油を醸成することに願いが込められています。

埼玉県産材を使用した木桶
創業100年の間で、原材料や製造方法など周囲を取り巻く環境は大きく変わりました。特筆すべき一つが木桶をつくる職人がゼロになるという危機を迎えたことでした。
大量生産による影響もあり、金属やプラスチック製のタンクが主流となったこと。そして、腕の良い木桶職人によって作られる木桶は早々壊れることがないため、両方の点において需要が激減したのです。
そうした影響から、木桶をつくる職人が10年前には全国で1人という状況に…
そして、その職人さんも引退が近くなり、今後、木桶が作れなくなると全国の木桶仕込みの醤油、味噌、日本酒などが作れなくなってしまうという大きな危機に直面していました。
この状況を打開すべく、小豆島に昔からある醤油蔵の蔵元が中心となって、“木桶職人復活プロジェクト”が始動。毎年、木桶サミットを小豆島で行ない、現在は職人が4名まで増えました。
弓削田醤油にも定期的に小豆島から職人さんが来て、古い木桶の補修等を行ない、木桶醤油の未来を守ってくれています。
2年半ほど前に、樹齢100年以上の年輪が詰まった杉の木を6本伐り出して始まった木桶づくり。製材・乾燥の期間を経て、小豆島に送られた木材は、職人さんの手で削られ、再び弓削田醤油に戻して組み立てられました。
アーチ状に削られた杉の木を組み合わせていき、板と板の間は金属製の釘等は使わず、竹を鉛筆状に削った竹釘を使用して、木材同士を組み上げていきます。
最後に、越生(おごせ)で採れた真竹を編んで箍(たが)をつくり、桶が外れないように桶の周りに箍を固く編み付けて完成です。

真新しい箍の青艶が新鮮さを感じます
木材なので、寒暖差等により収縮し、特に古い桶になると乾燥することで漏れてくることもあります。そうした際には、仕込みを行なっていない時期に桶に水を張り、木に水分を含ませて膨張させ、漏れを止めることもあるそうです。
本来なら仕込みを終えている段階だとしても、木桶の状態を見極め、自然の気候環境を見据えながら、最適な時期に仕込んでいます。

木桶の中が黒く見えるのは、水を張った状態

鉄の箍で補強している様子
弓削田醤油の醤油づくりに使用される丸大豆は、安心の国産素材です。埼玉県産か、オーガニック・有機栽培のものは、北海道・青森・秋田から仕入れています。
日本で流通する国産大豆は約3%に過ぎず、大多数が海外産で占められています。そのため、国産の丸大豆を使用した醤油は非常に希少なのです。

有機丸大豆
丸大豆とは、大豆を丸ごとそのまま使用していることを指します。一見、「丸ごと使用するのが当然」と思われる方も多いかもしれませんが、実際には流通する醤油の約80%が脱脂加工大豆で製造されています。
脱脂加工大豆とは、サラダ油などの食用油を作る過程で、大豆から油を抜いた後の大豆カスのことで、鳥の飼料などにも使用されるものです。脱脂加工大豆を使えば、安価に醤油生産ができるため、現在の醤油市場の大半を占めています。

脱脂加工大豆
昔は、丸大豆での生産が当然だったため、「丸大豆」という呼称はありませんでした。しかし、現在は適切に区分するために原料欄に「丸大豆(大豆)」という名前が付けられています。
丸大豆を使用する製造過程では、ほとんどの油が原料の中に残ります。この油が醗酵・熟成をする間に、旨味の素であるグリセリンに変化します。そのため、弓削田醤油の醤油は旨味成分が豊富でまろやかであり、添加物等を使用せずに、純粋な醤油として旨味成分に恵まれた商品が出来上がるのです。

丸大豆が引き出す醤油の旨味
弓削田醤油では、粉状の小麦は使用せず、原麦(げんばく)のまま使用します。
小麦も国産小麦で、埼玉県産か、オーガニック・有機栽培のものは北海道産を使用しています。

原麦付きの小麦
使用する塩は天日塩です。海の水を太陽の光で乾かして作られるこの塩は、自然の風味を最大限に引き出します。日本の天日塩だけでは塩味がやや控えめなため、こちらだけは海外産の天日塩と併用しております。一部、「海の精」という伊豆大島で取れる塩を使ってる商品は海の精使用と原料欄に記載があります。

天日塩
木桶を使って仕込む丸大豆醤油は、流通全体の1%しかありません。
かつては、木桶での仕込みが一般的でしたが、近代化により安価で大量生産が可能な大型金属製タンクやプラスチック製タンクが主流となりました。
これらのタンクは温度や湿度管理が簡易で、短期間で生産できるため、わずか3ヶ月ほどで醤油を作ることができます。一方、木桶仕込みでは1年ほどかかります。

1年間熟成・醗酵させる木桶醤油
3ヶ月での生産では醗酵が不十分なため、旨味成分が十分に引き出せません。そのため、添加物を加えて味や香りを調整することが一般的です。
また、醗酵と熟成には、酵母菌や乳酸菌などの菌・微生物が必要ですが、金属やプラスチックタンクには棲み着くことができません。そのため、それらのタンクで作る場合には後から菌を加える必要があります。
木桶の場合、木の中には蔵独自の沢山の菌が棲み着いており、これらの菌が醤油に豊かな香りと味わいをもたらします。添加物等も含まれておりませんので、自然の力で醗酵・熟成させた醤油は、身体にも優しく、五感を豊かにしてくれる醤油と成ります。
弓削田醤油の敷地内には、1日約100トンの湧き水が湧き出ています。
秩父の山から滲み出た湧き水は、一年中17度ほどの温度を保っています。この湧き水の周辺には、サワガニなど自然の生態系がそのまま残されており、美しい原風景が広がっています。
40年ぐらい前までは、この湧き水で仕込みをしていたそうですが、現在は周りに田畑があるため、地下80mから汲み上げた地下水を使用して、仕込みをしています。

工場横に綺麗な湧き水が湧く
大豆・小麦・種麹を混ぜて、麹をつくる工程
まず、主原料の国産丸大豆1.8トンをMK管と呼ばれるタンクの中で水に一晩漬け、水をしっかりと含ませます。その後、水を抜き、タンク内に118度の高温蒸気を充満させ、約1時間半かけて蒸します。
この過程で、大豆はふっくらと柔らかくなり、タンパク質の成分が変化して、酵素の作用を受けやすくなります。

MK管と呼ばれるタンクで大豆を蒸していく
もう一つの主原料である小麦は、1.4トンもの量を原麦のまま300度の炉で焙煎します。短時間でさっと火を通すことで、身が大きく、ふっくらとした小麦が出来上がります。
焙煎することで酵素の作用をより受けやすくなります。 その後、冷ました小麦を砕いて粉状にし、蒸した大豆をMK管から出しながら混ぜ合わせます。
約5トンになった小麦と大豆を混ぜ合わせた原材料に、種麹と呼ばれる麹菌の種を約800グラム、均等に振り掛けていきます。
この混ぜた原材料を麹室(こうじむろ)に運び、厚みが均等になるように広げます。この工程は「折り込み」と呼ばれています。
種麹はカビの菌の一種で、鰹節やブルーチーズなどのようにカビを生やすことで、酵素の働きで旨みが引き出されます。

麹菌を繁殖させる、麹室
麹菌が繁殖しやすいよう、麹室の中は常に温度30度、湿度100%に保たれます。麹菌が繁殖して酵素を作り出す過程で、3日間かけて大豆と小麦の色が黄色がかった緑色に変化します。
これで麹の出来上がりです。

出来上がった麹
麹と塩水を混ぜて、もろみをつくる工程
麹は醗酵させるために、麹室から出して、木桶に送られます。ここで、約5000リットルの塩水と混ぜられます。弓削田醤油では、地下約80mから水を汲み上げ、天日塩を用い、この仕込み作業を行ないます。
仕込み作業を経て、麹と塩水が混ざり合ってできたものを「もろみ」と呼びます。

木桶に仕込まれた、もろみ
明治時代から使用されている弓削田醤油の木桶には、およそ9000リットルのもろみを入れることができます。

高さ・直径ともに2m30cmある巨大な木桶
エアコンなどの人工的な設備はなく、夏の高温多湿、冬の低温乾燥という日本特有の自然の気候と調和しながら、もろみは1年間かけて醗酵と熟成を積み重ねていきます。
麹の酵素により、大豆と小麦は旨み成分であるアミノ酸やブドウ糖に分解されます。さらに、乳酸菌や酵母菌の醗酵が進むことで、醤油独特の味、色、香りが生まれるのです。
その際、もろみの中の酵母に酸素を送るために、時々「櫂棒(かいぼう)」などの道具を使って混ぜる必要があります。
このように昔ながらの方法で醗酵・熟成を約1年間行なったもろみを搾り出して得られた液体が醤油になります。
木桶でつくる醤油の場合、出来上がるまで約1年間が必要です。
一年以上熟成させた「もろみ」を搾り、加熱し、検査して瓶詰めする
一年以上、醗酵・熟成したもろみを、1m四方の風呂敷のような布、「濾布(ろふ)」で包みます。
この作業を繰り返し、積み重ねていきます。濾布に包まれたもろみ約16リットル、高さ約4mにもなります。200枚の濾布で包まれたもろみは、圧縮された重みで濾され、3日間ぐらいかけて搾り出されます。この液体が生醤油です。

圧縮された濾布
搾り終えたもろみは乾燥した状態でも、醤油の香りが強く感じられます。これらは、動物たちの飼料として二次利用され、ミネラル分豊富な餌になり、無駄なく使用されています。

濾された、もろみ|牛の飼料として二次利用されます
生醤油に85度の熱を加え、殺菌するとともに味、香り、色を整えます。
一部、店頭には非加熱の「搾り立て生醤油」が販売されており、しぼり体験もすることが出来ます。

非加熱の搾り立て生醤油
瓶詰めされた、搾り立て生醤油としぼり粕は、醤遊王国2階の食堂売店でしか販売されていない、希少な限定品です。
火入れ、濾過無しでの販売は、弓削田醤油の本商品が日本初とのことで、刺身・豆腐・おひたしなどの「つけ醤油・かけ醤油」として最適と好評です。非加熱ですので、酵母菌・乳酸菌などの微生物が生きたまま詰まっています。
搾った後のしぼり粕は、浅漬けなどに最適で、なす・きゅうり・大根・にんじんなどを漬けて冷蔵庫で冷やしておくと半日から1日で美味しい漬物が完成します。

搾り立て生醤油と、搾った後のしぼり粕
出来上がった醤油は検査室で厳密に検査されます。その後、一本一本丁寧に瓶詰めされ、弓削田醤油の製品として店舗に並び、皆様の食卓で使用されるのです。

弓削田醤油|商品

弓削田醤油|贈答商品
〔卵かけご飯〕
・搾り立て生醤油をご飯に少しかけ、混ぜます
・ご飯を一口たべて生醤油の風味を味わいます
・たまごをご飯に乗せて、搾り立て生醤油を再度、少しだけかけてお召し上がりください
醤油のうまみがご飯に染み込むと、醤油もたまごもご飯もすべて美味しくいただけます。すっきりとまろやかで、醤油のうまみが豊かな味わいです。
醤遊王国の2階食堂コーナーでお召し上がりいただけますので、ぜひご賞味ください。

オススメの食べ方
これらの工程を経て、弓削田醤油の木桶仕込み醤油が完成します。伝統を守りつつ、品質にこだわった醤油づくりは、皆様の食卓に安心と美味しさを届けるために日々続けられています。
醤遊王国本店では、工場見学に加え、生醤油のしぼり体験や生醤油の購入ができます。木桶を間近に眺めながら、醗酵と熟成を重ねた香り豊かで味わい深い醤油を試飲して購入が出来るのも嬉しいポイントです。
木桶仕込みだからこそ、味覚・嗅覚、そして身体に豊かな影響を与えてくれるという、木の魅力を再発見させていただく回となりました。工場見学をさせていただいた弓削田醤油様、有難うございました。
©️2024 Yamato meiboku Corporation.
9:00 ~ 17:00
土日祝も営業(正月休み・臨時休業あり)
〒350 – 1201
埼玉県日高市田波目804-1
TEL. 042 – 985 – 8011
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