原木の製材とは

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原木の製材とは

巨樹・銘木に新たな命を吹き込む職人

 

私たちが普段触れる木は、自然に生えている木々や既に形づくられた木製品ばかりです。しかし、木が私たちの使う形に変わるまでには、数多くの重要な過程を経なければなりません。

その中でも、「製材」と呼ばれる工程は、木が次に進む道を決める上で特に重要な役割を果たしています。今回は、製材に焦点を当てて詳しく紹介していきます。

 

取材協力に応じていただいたのは、愛知県弥富市に拠点を置く『株式会社ヤトミ製材』様。

会社の前身である曽祖父の代から数えると現社長で5代目となる約120年続く会社で、独自の優れた製材技術を活かし、誰も実現できなかった高難度の文化財保存事業も請け負い、東日本大震災で被災した『奇跡の一本松』の保存にも携わるなど日本の伝統文化保存事業に貢献しています。

誰にも出来ないような高難度で独創性を必要とする、まさに行き場を失ってしまった銘木製材の受け手として、ヤトミ製材は『最後の砦の意識』をもって製材業に取り組んでいます。

愛知県弥富市(株)ヤトミ製材

 

トピック

1.製材の歴史

奈良時代(8世紀)以降、国家事業や社寺仏閣に使用される木材を伐る仕事が定着し、その役割を果たす専門の職業が誕生。この職業の総称を「木挽(こびき)」(大鋸挽)と呼んでいました。

 

鋸の種類や刃の形状などの変遷を辿り、木挽き職人の仕事は連綿と続き、腕の良い木挽職人は城の増築や改修などで全国を転々とし、1603年に始まる江戸城の再修復工事が始まると、城下町には木挽の職人衆が住む長屋の区画も出来ました。現在も東京都中央区銀座には木挽町通りとして名前が残っています。

木挽町通り

 

明治時代後半に入ると産業革命の発展により機械での製材が定着するようになりました。

現在流通する木材のほとんどは機械での製材が一般的となっています。

 

機械による製材は利点と同じくらい苦労も伴います。特に機械の製材精度を確保することは、悩みの種とされています。

製材精度は、日々のメンテナンスや保守点検によって保たれています。しかし、機械の好不調を見極めることは、長年同じ機械を扱ってきた経験者の感覚にも依存します。これらの要素も含めて、製材技術として重要な役割を果たしています。

 

また、機械による製材には、製材可能な木の大きさに制約があります。大きな木を製材するためには、それに準じた大型の機械が必要となり、その結果、メンテナンスや機械操作の難易度も高まってしまいます。

 

国内の製材工場では、一般的な基本サイズとして直径60cm、長さ5mが採用されています。しかし、ヤトミ製材では、直径2.5m、長さ14m、幅1.8mまでの丸太の製材加工が可能な大型製材機(大バンド)を導入しています。これは全国的に見てもトップクラスの製材範囲です。

 

この大型製材機の導入は、半世紀以上前に遡ります。前述したように、メンテナンスや保守点検に多くの時間を費やす日々ではありますが、この製材機の導入により、他では扱いが難しい原木などを製材することが可能となりました。これにより、日本の巨樹や銘木の流通に大いに貢献しています。

長さ14mの巨木の製材も可能

 

2.原木の製材

木挽き職人の手による製材(木挽き)は、室町時代中期に導入された鋸「大鋸」の登場が革新的な影響を与えました。2人がかりで左右あるいは上下から縦挽きに挽いて、木材を切れるようになったため、格段に効率性が向上しました。

その後、江戸時代後期には「前挽き大鋸」が導入され、1人でも高効率・時短で製材できるようになりました。

『冨嶽三十六景・遠江山中』葛飾北斎筆 出典:ColBase

機械での製材の場合、基本的には縦切り(縦挽き)で製材されることが多く、稀に幅が広い木の場合は横切り(横挽き)で製材されることもありますが、取り卸ろしの効率や鋸への負担などを踏まえると横切りは難易度が高いとされています。

縦切り製材

 

製材において、重要な判断の一つは「最初にどの位置に鋸を入れるか」ということです。特に、ヤトミ製材では国家的な事業として文化財の保護も含めて御神木の製材を行う機会もあり、製材における確かな技術と経験が求められます。

 

加藤社長によれば、「経験や丸太を三次元的に見抜く力は重要な要素ですが、最終的には度胸と覚悟が決め手となる」と述べています。経験や勘だけでなく、挽く位置を決める際に必要な覚悟と胆力も重要だということです。

丸太と一言で言っても、形も中身も大きく異なり、同じ木の種類でも内部の特性はさまざまです。また、丸太を加工する際には、「最終的にどのような形にしたいか?」用途に合わせて、製材の角度や方向も多様に変わってきます。

 

3.製材の手順

原木を製材する場合の順序について、ヤトミ製材様にお伺いしてみました。

 

①名古屋港に入港した原木が水路からヤトミ製材の貯木場に到着

原木を筏士(いかだし)が船または原木に乗ってクレーン下まで移動

筏士

 

②クレーンで陸上に揚げる

リフトで陸揚げ

陸揚げ後、原木を確認

 

③陸上で指定寸法に玉切り

玉切り(長さを予めカットする工程)

 

④製材機に載せて、位置の確認

鋸を入れる角度を調整

 

⑤鎹(かすがい)を打って木を固定

鎹を打つ

⑥大バンド(1号機)で製材

大バンドでの製材

⑦小バンド(2号機/3号機)で製材

細かな製材は小バンド

⑧小バンドで指定の厚みに製材し、天乾燥できるよう桟木を入れて積む

傷が付かないように慎重に積む

 

⑨出荷

フォークリフトでトラックへ積み込み

 

4.製材の極意

製材職人の役割は、木の最適な使い方や取り方を見極め、私たちの要望に合わせて木に新たな命を与えることです。製材所は木の将来に大きな影響を与える立場にあり、流通過程において最もプレッシャーのかかる役割を果たしています。

 

加藤社長は、国家事業である文化財保護事業の製材を担当するなど、常に重圧の中で製材加工技術の発展に挑戦し続けてきました。数々の栄誉ある文化財保護や国内の銘木流通に貢献しており、原木の製材に関してその極意について詳しくお話しいただきました。

(株)ヤトミ製材 加藤社長

 

木と向き合う前段階

「丸太と同じくらい、荷主(お客様)を理解することが重要です。口に出された要望以上に、その目的や狙いを把握する必要があります。また、目の前の丸太が持つ個性や要素を理解することも重要です。これらの要素を把握することがスタートとなります。

 

そして、必ず丸太に触れて、一本一本に感謝の気持ちを込めます。丸太を単なる“モノ”として扱わず、出荷まで傷つけないように注意します。私たちの使命と責任は、大切に製材機に載せられた丸太をお客様のもとに返すことです。この気持ちを持って仕事を始めています」

製材前に必ず細かな確認を行う

 

いざ、製材

「角度と位置決めはセンスによるものが大きく、全体を漠然と見ながら、『この辺だ!』と。ふと頭に浮かんだ位置で決めます。一本一本の丸太は全く異なるため、理屈抜きで勘と経験と感性を大切にしています。

私は三次元の視点に長けており、丸太も三次元的に見ることが勘を働かせる重要な要素です。製材は大胆な作業と思われがちですが、実際には非常に緻密で繊細な作業です。しかし、最終的には覚悟を決めて『エイヤー』で、一気に製材を実行します」

製材の位置を定める

 

製材後

「傷をつけないように徹底し、直射日光を避け、木を積む際には桟木(サンギ)の位置にも注意しています。細部までこだわり、大切にお客様の元に返す姿勢を全社員で共有しています。全ての社員が『たった一つの手抜きが会社のミス・致命的な問題につながる』ということをしっかりと理解しています。

 

仕上がりがどれだけ綺麗でも、最後の最後でフォークリフトで積む際に傷をつけてしまったら、全てが水泡に帰します。そのため、積み終える瞬間まで、一切手を抜かず、全社員がお客様への愛情を徹底して貫いています」

丁寧に積み上げる

慎重なフォークリフト作業

 

日々のメンテナンス・保守点検

加藤社長によると、大型製材機(大バンド)の導入は半世紀前に遡るとのこと。当時は他の製材会社にも導入の機会があり、特別な存在ではなかったようです。しかし、他社ではうまく活用できなかったとのこと。

その理由は幾つかあり、一つ目は大型製材機の取り扱いは非常に難易度が高いという点です。

製材機が大きくなると鋸も大きくなり、大きな鋸は回転時に遠心力が働き、しっかりとベルトを張り切っていないと鋸に「たわみ」が生じてしまいます。たわみがあると丸太はまっすぐに製材できず、なにより非常に危険です。

 

二つ目は、前述の通り、メンテナンスには膨大な時間と労力が必要という点です。加藤社長と先代社長(お父様)は2人がかりで毎日メンテナンスに追われていたそうですが、それでも全く追いつかない状況だったそう。

しかし、その甲斐あって機械の好不調を見抜けるようになり、現在は社員全員がメンテナンスが出来るようになり、土日はメンテナンス部隊が補修作業を行っているそう。補修作業を全て終えるまでには20年もかかったそうです。

 

加藤社長によると、「このメンテナンスの徹底こそが、私たちが生き残った理由の一つです。なぜなら、古い機械の修理には数百万単位の費用がかかり、メンテナンスに負けると廃業に追い込まれる可能性が十分あるからです」とのこと。

大型製材機は仕事が終わるたびにメンテナンスし、次に挽く丸太を心地よく迎え入れる準備を怠らなかったことが、御神木など国の宝となる銘木の製材をお客様から依頼いただける要因になったのではないかと思います。

メンテナンス中の様子

 

 

〈あとがき〉

約1,200年以上の昔より社寺建築など、国にとって重要な建造物を挽いてきた製材職人たちがいます。道具は変化してきましたが、いつの時代も大切な木を挽く道具の手入れに時間をかける職人こそが、名工として称えられ、活躍してきました。

技術や豊かな感性はもちろんのこと、前提として木と向き合う基本姿勢こそが製材師として肝要なのだと勉強になりました。

 

国の文化財保護事業や水中乾燥事業など、「製材を通じて、森を守る」という理念を実践されているヤトミ製材様の取り組みをご紹介することで、少しでも皆様のお役に立てれば幸甚です。

 

取材にご協力いただきました、(株)ヤトミ製材 代表 加藤 様、営業部長 加藤 様、社員の皆様、誠にありがとうございました。

 

©️2023 Yamato meiboku Lab.

 

株式会社 ヤトミ製材

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