海中で20年間、乾燥させたケヤキの製材を特集
株式会社ヤトミ製材は、愛知県弥富市に拠点を置く老舗の製材業者であり、会社の前身である曽祖父の代から数えると現社長で5代目となる約120年続く会社です。独自の優れた製材技術を活かし、誰も実現できなかった高難度な文化財保存事業も請け負い、東日本大震災で被災した『奇跡の一本松』の保存に携わるなど日本の伝統文化保存事業に貢献しています。
誰にも出来ないような高難度で独創性を必要とする、まさに行き場を失ってしまった銘木製材の受け手として、ヤトミ製材は『最後の砦の意識』をもって製材業に取り組んでいます。
愛知県弥富市(株)ヤトミ製材
そして、2019年には水中貯木事業を事業継承して引き継ぎ、始動しました。
水中貯木事業は、受託事業者が減少しており、この事業を継続するためには事業継承が必要でした。幸いにも、ヤトミ製材は事業を受け入れるためのリソースと設備環境を備えており、顧客を引き継ぐ形で事業継承が行われました。これにより、水中貯木事業を受け持つ受託事業者の消失を防ぐことができました。
このような取り組みにより、ヤトミ製材は伝統的な製材業だけでなく、技術継承と文化財保存にも貢献している企業として評価されています。
「木材を水の中で乾燥させる」
一見矛盾した行為に思えます。しかし、そこには約1240年前から受け継がれてきた知恵と先人たちの洞察力によって見出された技術があり、“木を長く安心して使う”ために導き出した答えがありました。
そして、今回は水中土場に20年間、沈めていたケヤキの原木を製材したということで、営業部長の加藤様にお話を伺いました。
水中土場の様子
20年間、水中乾燥させたケヤキの製材
2023年5月11日、20年間海中に沈んでいた一本の木が引き揚げられました。
全長5m、幅約85cmの大きな欅の木です。
引き上げた時の木の表面は、なんとなくふやけたような印象で、柔らかな木肌に見えます。
20年間水中乾燥させた原木を製材機へ
いざ製材
製材機に載せた様子
製材機に載せてみると、その木の大きさが一層目立ちます。
ちなみに、製材機はヤトミ製材が誇る全国トップクラスの大型製材機で、長さ14m、直径2.5m、幅1.8mまでの丸太が製材できます。
位置を確認して、いざ製材してみると…
製材直後の木肌
製材直後の木肌
とても20年間も海中に沈めてあったとは思えないほど綺麗な板目が取れました。
白太もほとんど水を排出しているようで、湿った印象もありません。
ヤトミ製材の加藤営業部長によると、
「理論上何十年沈めていても問題ないとは言いますが、いざ製材前の姿を見ると疑問を持たざるを得ませんでした」とのこと。
やはり、最初は不安を抱いていたようですが、今回の製材によって理論通りの結果が証明されたことになりました。
全国的に見ても、また銘木や水中乾燥、製材の史実を振り返っても、このような機会は非常に珍しく貴重なものです。
古くは伊勢神宮の式年遷宮の御用材から始まったとされる、水中乾燥 –
その技術を今に遺し、伝え、発展させていく株式会社ヤトミ製材。
まだ誰も取り組んでいない、こういった取り組みで木の可能性が拡がることを切に願っています。
取材にご協力いただきました、(株)ヤトミ製材 営業部長 加藤 様、社員の皆様、誠にありがとうございました。
ぜひ、こちらの記事もご参照ください。
©️2023 Yamato meiboku Lab.
株式会社 ヤトミ製材
〒498-0066
愛知県弥富市楠1丁目38番地
TEL:0567 – 68 – 3205
FAX:0567 – 68 – 2464